本棚No4「「マーケティング」大全」

 

 20年近く前になるが、大先輩から次のような話を聞かされた。60年代から70年代頃、マーケティングの仕事をしている人がたまたま新幹線で松下幸之助と隣り合わせになった。日本ではまだマーケティングが普及しはじめたばかりの頃で、マーケティング理論と実践について長時間に渡り説明をした。その後で松下幸之助は一言「そんな事やったら何十年も前から私らやってますわ。」と言ったそうである。
 マーケティングとは本来、書物や論文などで学べるものでは無く、日々の経営の中で試行錯誤しながら築いていくものであろう。顧客のことを考えながら商売をしていれば、マーケティングの書物に書かれているようなことはほとんど実践ずみなのかもしれない。    
 ただ、多くの人たちは経営の神様のように鋭いセンスと勘が働くわけではない。マーケティング戦略を考えるヒントや枠組み(フレーム)があれば、マーケティング企画立案の手助けになる。そうした時の材料をコンパクトに提供してくれるのが本書ではないだろうか。基本的なマーケティング戦略のフレームが網羅されており、特にマーケティングの企画書、報告書などを作成する場合、索引のマーケティング用語からの確認が便利で重宝する。
 また、マーケティング1.0(製品中心)、マーケティング2.0(顧客中心)、マーケティング3.0(価値主導)までのマーケティングの発展史と様々な事例も豊富である。一通りマーケティングを勉強したい人には面白く読める書物である。

 近年のデジタルマーケティングは変化が非常に激しく、最新のWEB戦略にはホットな情報も必要である。私は主に「日経デジタルマーケティング」(日経BP社)や日経3紙(日経、日経産業、日経流通)などで補足している。デジタルマーケティングについても本質は「「マーケティング」大全」に書かれていることである。違っているのは、情報伝達とマーケティングツールの多様性、スピード感である。

おすすめの図書)

▼もう少し広いマネジメントレベルには以下の2冊。
 三谷宏冶(2014年9月)「ビジネスモデル全史」(ディスカヴァー・トウェンティワン)
 三谷宏冶(2013年4月)「経営戦略全史」(ディスカヴァー・トウェンティワン)

▼マーケティング以前に必要な商売の心掛けで多くの示唆を今でも与えてくれる書物。
 累計400万部のロングセラー。
 松下幸之助(1968年5月)「道をひらく」(PHP研究所)

2016年10月18日|分類:本棚