本棚No1「人類を超えるAIは日本から生まれる」

 


 著者は日本からシンギュラリティを起こそうと「シンギュラリティサロン」(2015年1月より開催)を月1回開催されており、それに私も昨年11月から参加しています。毎回人工知能の先端情報が取り上げられ、内容をどの程度理解できているのかおぼつかない状況でしたが、この本を読み少しは頭の中が整理され、AIにますます興味ができました。

 私が印象に残ったのは次の3点です。

 1つ目は現在の第3次人工知能ブームの要因です。
 「ディープラーニング」「コンピュータの計算能力の増大」「ビッグデータ」の3つを挙げています。1次(1950年代)、2次(1980年代)と異なりコンピュータの処理能力は格段に進歩、分析対象となる多量のデータと分析・判断するプログラムである「ディープラーニング」がキーとなっています。
 
 2つ目がコンピュータと人間の違いです。
 コンピュータは学習に膨大なデータを読み込む必要がありますが、人間の脳はわずかなデータで概念を獲得します。例として、話題のgoogleの猫の画像を挙げています。「猫」の膨大な画像をコンピュータに読み込ませ、「教師なし」(正解となる回答を与えない)で人工知能が「猫」の特徴を発見、つまり「猫」の概念を獲得したと言うのです。人間であれば数匹の「猫」を見れば「猫」の概念を獲得でき、それを「猫」と言う名前であると教えられれば簡単に理解できる、つまり「半教師有り学習」です。人間はこの「教師なし」と「教師あり」を同時に行っているのです。これからの人工知能の開発は、このような学習のためのマスタープログラムの開発にかかっているようです。人工知能がバラ色のような錯覚に陥っていましたが、まだまだ人間の脳にはほど遠いようです。

 3つ目は「脳」に近づきあるいは追い越しそうな技術的ブレークスルーの可能性です。
 消費電力あたりの性能を競う「グリーン500」でトップをとった斉藤元章氏が開発している、ニューロ・シナプティック・プロセッシング・ユニット(NSPU)です。脳細胞に相当する演算のコアが1000億個、それを結びつけるシナプスに相当する100兆個のインターコネクトからなるプロセッサーを、人間の脳に相当するレベルでおよそ10年を目処に開発されるそうです。まさにSFの世界が現実の世界になろうとしています。
米国の企業が優位に立っている人工知能開発の中で、日本人に希望と勇気を与えてくれます。

 本来コンピュータが得意な計算能力に人間のような認知学習機能が備われば、中途半端なデータサイエンティストは不要な時代が来るのかもしれません。調査結果から実際のアクションを起こすプランニング力がますます重要になるとの思いを強く抱かせてくれる本でした。分析の大部分を人工知能に置き換えることができれば、最も重要なクリエイティブな作業に集中できるのかもしれません。
                                   (M)

他に読んでみた参考書籍)

 

2016年03月15日|分類:本棚